宮前平源泉 湯けむりの庄~思考停止の楽園で脳が溶けゆく~

東京カレンダーという港区女子愛読のメディアによれば、「三茶はおしゃれすぎず、アングラすぎない”中途半端な街”」だという。

しかし、東京カレンダーは三茶の中途半端さへの理解が足りていない。三茶の中途半端さは、街の雰囲気だけの問題ではないのだ。

外国人観光客がわざわざ訪れる大都市・渋谷の2個隣でありながら、温泉天国に直通している。それが三茶なのだ。

三軒茶屋から30分弱電車に揺られていると「宮前平」という駅にたどり着く。宮前平は、どこを切り取ってもファミリーの住まう住宅街といった雰囲気で、駅の周りにはスーパーやホームセンター、薬局など、生活に必要な店しかない。

しかしこれは表の顔に過ぎない。宮前平の真の実力はここにある。

「宮前平源泉 湯けむりの庄」である。日々の生活に摩耗した現代社会の奴隷たちを、琥珀色の黒湯温泉と岩盤浴が迎え入れてくれる楽園だ。

神々しいエントランスと、無数に咲き誇るチューリップ(造花)。この世とあの世の境界が目の前にあるような錯覚に陥り、めまいがする。

他のお客さんが無防備な恰好(館内着)闊歩しているため、あまり多くの写真は撮れないが、まずは受付を済ませる。温泉放題と岩盤浴放題のプランを選択。併せて2000円ぐらいである。

冥土の土産のラインナップも充実。

再び咲き誇るチューリップにいざなわれ、 まずは温泉を堪能。適温でやさしい肌触りの黒湯である。露天風呂の数は6種類。室内風呂もある。雲一つない快晴が心地よい。花の香りもほのかに漂う、癒し空間である。一応日よけがあるので、紫外線が気になる人でも安心して入れる。

普通のサウナや、フィンランド式サウナ「ロウリュ」もある。かよわい私は霧と化してしまいそうだったので今回は体験せず。ロウリュは時間制。

続けて岩盤浴へ。こちらは6種類ある。石がジャラジャラと敷いてあるタイプが体にフィットして心地よい。石はアメジストやブラックゲルマニウムなど、パワーストーン的ラインナップがあるが、素人には効果の違いが分からない。

「天」という部屋は時間制で予約制。上から光ファイバーが大量に垂れ下がっており緑やオレンジ色に光る。ほかの部屋にはない香りつきミストも漂っている。25分ほどのリラックス空間を少数で独占できるが、光ファイバーの設置工事はどのように行ったのかがひたすらに気になってしまう空間だった。

「氷」という部屋もあり、ここはチルアウト用。氷がにょきにょきとはえてきて、パキーン!と折れるので面白い。

温泉と岩盤浴を小一時間続けていると、いつも悩み事を錬成しまくる脳もいよいよぼんやりしてくる。トリップのはじまりである。

ごはん処でしばしランチ休憩。 豆腐推しのお店なのに、豆腐のページは最後のほうにある。

「健康黒尽くし御膳」(1100円)と、「作りたて手前仕込み豆腐」(680円)を注文。溶けつつある脳にしみわたる健康食材。

この豆腐は、「ろうの火が消えるまで開けてはならない」と忠告される。ダメと言われると覗きたくなるもどかしさと葛藤しながら10分以上待つと、ふんわりした豆腐が出来上がる。

ごはんのあとは再び温泉へ。血糖値の高まりも相まって眠気を誘い、そろそろ脳の崩壊を悟り始める。私の命はここまでか。

そして最後に飲むヨーグルトをキメる。ほどよい酸味とチーズ感。飲むヨーグルトのとろーりとしたテクスチャーは、現在の私の脳のテクスチャーを暗示しているように思えた。ホカホカな体で、リラックススペースで休憩。油断していると寝落ちする。

こうしてつかの間のトリップは終わった。この晩、副交感神経に支配された体はよく眠れた。あれから私が目覚めたかどうかは不明だ。私の意識は確かにここにある。しかし、ここはどこなのだろう。この世なのか、あの世なのか。天国のような癒しと引き換えに、真実を証明する唯一の器官である脳が溶かされた以上、それを知る術はもうないのだ。

宮前平源泉 湯けむりの庄のホームページ:https://www.yukemurinosato.com/miyamaedaira/

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