リストランテホンダ:春の味覚のメドレー

三茶とは、中途半端におしゃれで中途半端にダサい街である。この意味を真に理解するためには、”半端なくおしゃれ”や、”半端なくダサい”を体験しなければならない。三茶を愛するためには、三茶以外への浮気体験が欠かせないのだ。

都内にある”半端なくおしゃれ”な街のいくつかは、もちろん中途半端な三茶から直通している。具体的には、表参道と青山(外苑前)である。今宵は、青山での”半端なくおしゃれ”なディナーを通じ、三茶への愛情を深めていきたい。

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時を彩るコース料理

訪れたのは、リストランテホンダ。ミシュラン一つ星を10回も獲得しているミシュラン常連のイタリアンである。

リストランテホンダは、外苑前から5分ほど歩いた位置に佇んでいる。リストランテ(イタリア語で高級レストラン)であることをアピールしすぎない慎ましい外観である。知る人ぞ知る穴場感を演出するのも、”半端なくおしゃれ”の秘訣かもしれない。

灰色をベースにした落ち着いた店内。テーブルの上に飾られている桜は、まさに紅一点という言葉がふさわしい。

“半端なくおしゃれ”の秘訣その2。それはきっと「 足し算ではなく引き算」にあるのだろう。

1皿目は、鶏の白レバーアイス、完熟いちご、バルサミコ酢のビネガーのモナカ。白レバーをアイスにするセンスが、すでに半端なくおしゃれである。モナカの上下をとじて口に含むと、レバーのなめらかさといちごの甘味、バルサミコ酢の酸味が絶妙にマッチして舌の上で溶けあう。一皿目として食欲のスイッチを入れるにふさわしい料理である。

2皿目は、白アスパラガスの上で貝たちとボンタンが共演している一品。一番上では、エディブルフラワーであるパンジーが踊り咲いている。白アスパラガスの柔らかい食感と赤貝やほっき貝の弾力のある食感が口を楽しませてくれる。ボンタンの酸味はアクセントとなり、左の白アスパラガスソースのクリーミーさが食材同士をなじませ、一つの複雑な味にまとめる。

3皿目。長崎のさわらのパン粉焼き、ふきのとうに菜の花ソースを添えたもの。厳選された春の味覚が並んでいるといえよう。さわらは、パン粉焼きの香ばしさと白身のやわらかさのコントラストが良い。菜の花のほろ苦いソースが、さわらや野菜のみずみずしさをアップさせる。お花見をせずとも春を感じられる料理である。

4皿目は、フルーツトマトの冷製パスタ。トマトの甘味が前面に出ており、トマトそのもののおいしさを引き出したパスタである。また、パスタ麺はそうめんのように細いが、一本一本に弾力と存在感がある。パスタといえば基本的には重たい料理であるはずだが、このパスタは最後の一口までフレッシュで繊細な味わいであった。

5皿目は、はまぐりと春キャベツのオイルベースパスタ。上にはからすみが振りかけられている。先ほどのトマトパスタとは違い、オイルと魚介の旨味がイタリアンらしさを感じさせる。春キャベツの甘味、菜の花の苦味。全体として締まりのある味を演出するために、それぞれの食材がことなる役目を果たしている。パスタ麺は比較的なじみのある麺だが、とうてい家では再現不可能に思えた。

6皿目。メインは、フランス産の鴨と、ヘーゼルナッツと黒キャベツのソース。お芋は紅はるか。皿選びや食材の色合い、そしてヘーゼルナッツの風味が、まるで森の中にいるような感覚を誘う。鴨はとてもジューシーで柔らかい。紅はるかは、そこらの焼きいもには叶わないほど甘味が引き出されており、黒キャベツの甘味のあるソースに合う。五感を刺激する料理である。

7皿目はお口直しのデザート。ブラッドオレンジ、さふらん、デコポン、はっさく。柑橘のオンパレードなシャーベットである。爽やかな酸味と柑橘の香気が、舌をチルアウトさせる。流れに美しさをおぼえるコース料理である。

8皿目は、本番のデザート。いちごのカタラーナである。花びらが散ったような見た目が美しい。純度の高いいちごのアイスと、カスタードといちごが融合したカタラーナ。イタリアのデザートを半端なくおしゃれにアレンジした結果がコレである。

最後は食後の飲み物と小菓子としてのフィナンシェ。ナッツ感の強いフィナンシェであった。飲み物はミントティーもあるので、ノンカフェイン志望でもOK。

以上が、リストランテホンダのコース料理だ。イタリアンをベースに、季節や食材自体の味を尊重する日本らしい姿勢を織り交ぜた芸術的な料理たち。一品一品が主張しすぎず、全体として豊かな味わいになるような流れ。味覚の芸術でありながら、時の芸術であるとも思えた。

リストランテホンダには、三茶ではありえないほどの徹底したおしゃれさが詰まっていた。”半端なくおしゃれ”を垣間見て一回り成長した三茶民は、三茶への理解と愛をいっそう深めていけること間違いなしだろう。

リストランテホンダ ホームページ:
http://ristorantehonda.jp/