M.Santa:パイに込められた静かな情熱

二子玉川といえば、RISE、高島屋、楽天、そして多摩川である。それ以外のキーワードは特に思い浮かばない。それほどまでに、二子玉川は駅周辺が人々の脳を支配する中央集権型の街だと言える。はるか昔に「いぬたま・ねこたま」という庶民的テーマパークが存在した黒歴史も、オシャレという名の権力で塗りつぶしている街なのだ。

そんな熾烈な権力争いからは少し距離をおいた位置に、全粒粉パイ専門店M.Santaはひっそりと佇んでいる。

M.Santaは、RISEの裏道のさらに裏道あたりにある。駅からは近いが、権力争いゾーンではなく閑静な住宅街ゾーンに、住宅たちと一緒になじむような形で静かに息をひそめている。そんなカメレオン的な外観は、お菓子屋であることに気づけるかどうかも怪しいレベルであり、ハイクオリティのパイが私たちを待っていることを想像させることもない。

しかし、足を踏み入れれば、店内にはパイのおいしそうな香りが漂っている。名物はこの「黒毛和牛のパテ」である。パティシエ畑出身者が作る、バターの香り豊かなパイ生地の中に、自前の農場で育て上げた牛のジューシーで上質な肉が詰まっている。オーブンで温めて食べると最高においしい。普段ミートパイを食べない人でも、M.Santaのミートパイ愛せることだろう。

なんでも、牛の生産者は行列が何十年も絶えない吉祥寺のメンチカツ店・サトウで8年も修業したようである。メンチカツの聖地で学んだことを牛の生産に活かし、ミートパイに合う最高の牛をプロデュースしているのである。つまり、「黒毛和牛のパテ」作りは、専用の牛の飼育からスタートしているのだ。

ミートパイ以外にも、アップルパイやキッシュロレーヌなどがあるが、この日は売り切れが多く、店頭に並んでいるラインナップが少なかった。きっと、他の商品のパイ生地も美味しいに違いない。

店内は長細い。一応イートインスペースもあるようだがこの日は提供されていなかった。他にも焼き菓子や自家製ハーブティーがある。

筆者は「ラベンダーブレンド」と「フルーツハーブティー」を買って飲んだが、香りがとにかく桁違いに良かった。絶妙なバランスでブレンドされたいくつかのハーブが、芯のあるまとまった味を作り出している。リラックス効果の高い、ぜいたくな時間を送れる。そんなハーブティーである。一杯200円ぐらいするが、その価値は十分にある。

M.Santaは、二子玉川の印象を賭けた争いとは無縁であるが、本物の味をどこまでも追求し、常に「おいしさ」と勝負し続けている、深い情熱に満ちた全粒粉パイ専門店なのである。

M.Santa 公式ホームページ: https://www.pie-santa.com/

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