HiDE FARM KITCHENで最後の晩餐(2)

三茶の隠れた名店ことHiDE FARM KITCHENが、今年の7月19日に閉店となる。我々三茶民は、中毒性の高い「海老と帆立のアメリケーヌソースの焼きリゾット」以外を注文したことがほとんどなかったので、最後にHiDEの料理を堪能すべく、二夜に分けて最後の晩餐を行った。これは二夜目のレポートである。

一夜目はこちら:HiDE FARM KITCHENで最後の晩餐(1)

今宵も、期待で胸を膨らませながら階段を登る。時間は18時半。店のドアを開けると、すでにお客さんで賑わっていた。一夜目の帰り際に予約をしていたから入れたものの、あとから来た予約なし客は「満席です」とお断りされていた。つまりこの日は、予約客でいっぱいだったのである。危なかった。HiDEが愛されている店であることの証である。みんな最後の晩餐を楽しみに来ているのだろう。

一夜目と同じ写真になるが、以下にメニュー写真を貼る。

一夜目は、焼きリゾット以外の料理にトライするのが主なミッションであった。一方で二夜目の今回は、「海老と帆立のアメリケーヌソースの焼きリゾット」を食べ納めする目的もあるので、それを中心となるように食べ物を選んだ。

一皿目は「チキンとアボカドのサラダ」。HiDEに来たからには野菜を食べずには始まらない。柔らかいチキンと柔らかいアボカド、そしてHiDE自慢の野菜たちが、クリーミーなドレッシングによって共存している。サラダのチキンといえばあっさりした味が多いが、このチキンは少しスパイシーな味付けで、アクセントとなる。小さなところにもこだわり、手を抜かない。そんなHiDEの良さが表れているサラダである。

二皿目は「アンチョビポテト」。一夜目にも頼んだが、あまりにもおいしいポテトだったもんで、また頼んでしまった。上に乗っているアンチョビバターをポテトの熱で溶かしながら、バターがまんべんなく付着するように工夫しながら食べ進めていく。「ああ、やっぱりアンチョビポテト専門店を開いてほしい。」そんな叶わぬ願いを心に秘めながら、アンチョビの風味を記憶に刻んでいく。このポテトは三茶民の記憶の中で、”伝説のアンチョビポテト”になるのだ。

三皿目は「和牛のボロネーゼ タリアテッレ」。一夜目にタリアテッレが美味しかったので、今回は別のタリアテッレを頼んだ。ジューシーな和牛がふんだんに使われており、チーズのとろけ具合も丁度良い。特定の味がとがりすぎていない、バランスの良いボロネーゼである。肉の旨味と麺のモチモチの相性が抜群だ。

食べ進めているうちに次々と予約客が来店し、席は埋まった。ほとんどが店員の友人らしき人で、笑顔にあふれた空間となってきた。子連れの客も多く、店員の子供らしき子供もいたが、子供のはしゃぐ声さえもこの店では環境音の一部となるような気がした。それぐらいアットホームで温かい雰囲気なのである。三茶には飲食店がなかなかあるが、こういう雰囲気の店は珍しい。貴重な憩いの場だったと言える。

四皿目は、我らが「海老と帆立のアメリケーヌソースの焼きリゾット」。野菜が尽きたようで、今回は上に乗っているはずの葉っぱはなし。リゾットをスプーンですくい、口に含んだ瞬間、海老の濃厚な風味と思い出の味がよみがえる。

今回の最後の晩餐キャンペーンで色々と食べてみて、HiDEの料理はこの焼きリゾット以外もかなり美味しいことが分かったが、それでもやっぱりこの焼きリゾットがダントツで美味しい。唯一無二であり、世界一。それが「海老と帆立のアメリケーヌソースの焼きリゾット」である。これを機に、このメニューを家で再現してみたくなったが、おそらく何度試作を重ねても、この完成品に至ることがないまま命尽きることだろう。

とにかく傑作である。 店主は家業を継いでも、どうか家族の人にレシピを継いで欲しいと思う。いつかお子様が独立してレストランを開業し、この料理を食べられる日が来るのを、未来のささやかな楽しみとしておく。

ラストは「挽肉のカレーソースの焼きリゾット 温玉のせ」。別の焼きリゾットも食べてみたかったのと、HiDEのカレーを前々から食べてみたかったのが選定理由である。味が濃いと予想したのでラストにした。

カレーはスパイシーでしっかりとピリ辛だが、HiDEらしい優しい口当たりのカレーだ。挽肉もたっぷりと使われているが、味にくどさがない。リゾット部分は、海老とホタテのと同様に、柔らかい米の合間にチーズが入っている。温玉を割って食べたときの全体のとろ~りとした一体感がたまらない。シメにぴったりの焼きリゾットだと言えよう。

今日の最後の一口は、本当に最後の一口となった。もう二度とHiDEの美味しい料理が食べられないことが寂しかった。

こうしてHiDE FARM KITCHENでの最後の晩餐を終えた。どの料理も唯一無二であり、細部までのこだわりを感じた。それは決して料理の技術の高さだけではなく、ホスピタリティの高い店員の人間性にも裏打ちされた美味しさだった。

HiDEのホームページには、「お客様に元気と喜びを伝えられるような気楽に集まれる環境をつくりたい!」と店のコンセプトが書かれている。HiDEは、間違いなくこのコンセプトを体現した店だった。最後まで客に愛され、客の記憶に温かい思い出を残した三茶の名店だった。HiDEと出会えた三茶民は幸せ者である。幸せと感動をありがとう。

儚い一瞬を積み重ね、変わらない記憶として脳に遺してゆく。これが、変わりゆく三茶の街の中で暮らす、三茶民のライフスタイルなのである。

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