我々は探し人をしていた。一週間前に三茶の東急で姿を現した、”あの兄弟”を見失ったのだ。
彼らはもう三茶を離れてしまっただろうか。いや、まだそう遠くない場所にいるはずだ。
兄弟を追いかける我々の足は、渋谷の迷宮にたどり着いた。

東急フードショー。この迷宮には様々な食料品が溢れかえっている。四方八方の彩り豊かな食料が目を惑わせ、唾液の分泌を促す香りが足取りを滞らせる。
抹茶専門店を目にした瞬間、膨張した誘惑は破裂した。

目の前にあるのは「一〇八抹茶茶廊」。どうやらこの迷宮ではチョコミントフェアが行われているらしく、一〇八抹茶茶廊もそのフェアの参加店であった。

抹茶チョコミントスムージー(681円)。抹茶とチョコミント。あるようでなかった組み合わせだ。青みがかった緑と、黄色が強い緑のコントラストが魅惑を放つ。
当初の目的は脳内から遠ざかり、気づけばそれを手にしていた。

爽快感が強すぎないミント氷の上に浮かぶ抹茶アイスは、苦味がしっかりと効いた本格的な味わいだ。流行りに合わせて添えられているタピオカは、黒糖ではなくチョコレート風味のタピオカである。弾力が弱めで咀嚼しやすい。
ミントと抹茶を同時に口に運ぶ。チョコミントの爽やかさが口内を覆い、次第に減衰していく。それと同時に、抹茶アイスの甘味と苦味が立ち上ってくる。マリアージュというよりは、時間差勝負だ。口の中で味が変化する新規性の高さが脳を震わせる。
すれ違う二人をつなぐのは、チョコレートソースである。ミントとチョコレート、抹茶とチョコレートはそれぞれ相性が良い。チョコレートの仲人が、ミントと抹茶を引き合わせ、共存を可能にしているのだ。
爽やかなスムージーに意識を洗われた我々は我に帰り、兄弟探しを再開した。
出口を求めて迷宮を彷徨う。やはり、間に合わなかったか…
絶望の片鱗が見え始めた時、奇跡は起こった。ハヤシフルーツにて、兄弟の片割れを発見したのだ。
我々は迷うことなく、その片割れを連行することにした。


キウイブラザーズのゴールド。
探し人を、ようやく捕まえることができた。
さあ、可愛がってあげよう。どこの誰よりも愛してあげよう。今日から君は、我々と共に一生を添い遂げるのだ。危険多き外の世界から、解放してあげるのだ。我々と君だけがいる、平和な空間で。
大丈夫、何も心配することはない。片割れのグリーンも、すぐに連れてきてあげるから。
一〇八抹茶茶廊 公式ホームページ: http://www.108matcha-saro.com/